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税金裁判の動向【今月のポイント】第235回 給与所得を有する医師による絵画制作販売から生じた損失

名城大学法学部 教授 伊川 正樹

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医師として医療法人の役員を務めるとともに、診療行為を行って給与を得ている者が、絵画の制作及び販売によって損失を生じた場合、その損失を事業所得に係るものと扱うことはできるのでしょうか。また、そのような場合、事業所得と雑所得との区別は、どのような要素を重視して判断すればよいのでしょうか。今回はこの点が争われた事案をみていきましょう。

事案の概要

原告Xは、A医療法人の理事長を務め、同法人が経営するBクリニックで副院長として診療行為を行い、以下の金額の給与収入を得ていました(以下の各年分を「本件各年分」といいます。)。

平成25年分:1億6,800万円平成26年分:1億7,100万円平成27年分:1億7,...