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[全文公開] 国庫補助金と圧縮記帳

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受動喫煙防止のための喫煙室の設置,環境負荷の少ない省エネ型機器の導入……。内国法人が国又は地方公共団体等から固定資産の取得又は改良のために補助金等を交付されて,これらの設備を取得等した場合,国庫補助金等の額の範囲で圧縮記帳が認められている( 法法42法令79 )。法令で規定されているもの以外の補助金等が国庫補助金等に該当するかは,国の一般会計予算を財源としたもので,交付される補助金等の委託先団体が定める要件や募集要項を確認することが一つの目安となるようだ。

圧縮記帳の基本的な考え方は,将来に課税関係を繰り延べるというもの。通常,補助金等は交付された事業年度の課税所得に含まれてしまうため,設置費用の助成という補助金本来の効果が得られない。そこで,補助金等を元手に取得した資産の帳簿価額を減額することで損金(圧縮損)を生み出し,課税のタイミングを先送りするという仕組みだ。

例えば,補助金80の交付を受けて取得価額100の資産を期首取得したとする。その資産の償却率を0.1とすると,通常は,益金80,償却費としての損金10で差額70が課税されてしまう。一方,補助金全額が圧縮できる場合,益金80,損金は圧縮損80,償却費2(=(100-80)×0.1)で差額-2となり,課税されなくて済む。ただ,償却費の計算の基礎となる取得価額は,減額した後の価額となることで損金算入できる額が減少するため,翌年度以降の課税所得が通常より増えることになる。

なお,会計処理は,損金経理により帳簿価額を減額する「直接減額方式」のほかに,確定決算又は決算確定の日までに剰余金の処分により圧縮積立金を積み立てる「積立金方式」がある。