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[全文公開] 部分完成基準と課税売上げ

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建設工事等について,部分完成引渡しの特約があり,その完成した部分を引渡しているにもかかわらず消費税の課税売上げとしておらず,税務調査で否認されるケースがあるという。多くは経理担当者が,部分完成引渡しに係る特約があることを見落としていることによるものだそうだ。

物の引渡しを要する請負に係る資産の譲渡等の時期は,「目的物の全部を完成して引き渡した日」が原則だ( 消基通9-1-5 )。ただ,事業者が請け負った建設工事等について,以下①②のような事実がある場合,その建設工事等の全部が完成しないときでも,その課税期間において引き渡した建設工事等の量又は完成した部分に対応する工事代金に係る資産の譲渡等の時期は「完成した部分の引渡しを行った日」となる( 消基通9-1-8 )。

① 一の契約により同種の建設工事等を多量に請負ったような場合で,その引渡量に従い工事代金を収入する旨の特約又は慣習があるとき

② 1個の建設工事等であっても,その建設工事等の一部が完成し,その完成した部分を引き渡した都度その割合に応じて工事代金を収入する旨の特約や慣習がある場合

この部分完成基準は,工事完成前に先行的に譲渡等を行ったとすることを認める「工事進行基準」とは異なり選択適用できるものではない。

また,部分完成基準が適用される建設工事等に対する消費税の適用税率は,それぞれの部分引渡しが行われた日により判定することになる点にも注意が必要だ。

工事の請負に関する経過措置の適用がないものである場合,令和元年9月30日までの部分引渡しについては旧税率8%,令和元年10月1日以後の部分引渡しについては新税率10%が適用されることになる(国税庁 経過措置Q&A(具)問3)。