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[全文公開] 簡易課税制度届出特例と“属する”期間

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軽減税率制度が始まれば,事業者の事務負担が増えることになる。課税仕入れ等の税額計算で支障をきたさないよう,中小事業者には「簡易課税制度の届出の特例」という経過措置が設けられている。当課税期間から簡易課税制度を適用するには原則,前課税期間の末日までに提出しなければならないが,同特例の場合,当課税期間中の提出で適用が認められるという,いわば“後出し”的な対応が可能だ。

同特例の適用対象期間は,2019.10/1~2020.9/30。具体的には「31年適用日(2019年10月1日)から31年適用日以後1年を経過する日までの日の属する課税期間に限る」(28年改正法附則40)とされている。ここでいう“~の属する”が示す範囲は1課税期間のうち,2019.10/1~2020.9/30の日 を含む という意味だ。つまり,事業者の事業年度によって,適用される課税期間に違いが出てくるという。

同特例の適用関係に関する考え方は次のとおりだ。例えば,3月決算法人(課税期間1年)の場合,当課税期間(2019.4/1~2020.3/31)には,適用対象期間が含まれる。同じように,翌課税期間(2020.4/1~2021.3/31)にも,適用対象期間が含まれる。したがって,2年度分の課税期間が同特例の対象だ。ただし,9月決算法人の場合,翌課税期間(2019.10/1~2020.9/30)には,適用対象期間がぴったりと重なるため,1年度分の課税期間しか同特例の対象にはならない。同特例を適用すると,事業を廃止した場合等を除き,2年間継続して適用しなければならないため,対象となる課税期間の違いには留意したほうがいいだろう。

なお,同特例においては,中小事業者が課税仕入れ等を標準税率と軽減税率に区分することについて「困難な事情があれば」適用できるとされている。この困難な事情については,「その困難の度合いを問わない」(軽減通達21)とされていることも確認しておきたい。