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[全文公開] 不納付加算税と「正当な理由があると認められる場合」

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源泉所得税の納付漏れがあったことに「正当な理由があると認められる場合」には,不納付加算税が免除される( 通法67 ①)。

ここでいう「正当な理由があると認められる場合」には,単に源泉徴収すべきことを“知らなかった”だけでは該当せず,“知り得る状況になかった”と認められることがポイントの一つになるようだ。

「正当な理由があると認められる場合」は,国税庁が公表する事務運営指針で4つ例示されている。例えば,「災害,交通・通信の途絶その他法定納期限内に納付しなかったことについて真にやむを得ない事由があると認められるとき」などがある(源泉所得税及び復興特別所得税の不納付加算税の取扱いについて(事務運営指針)1)。事務運営指針で示されているものは,あくまで“例示”であり,他に類似する正当な理由があれば,不納付加算税が免除される余地はあるという。

「正当な理由があると認められる場合」に該当すると判断された裁決事例として,非居住者に対して支払った賃借料に係る事例がある(平成25年5月21日裁決)。この事例は,請求人が賃借していた店舗等の賃貸人が,居住者から非居住者となったことを“知り得る状況になかった”ことなどが認められたものである。

審判所は,①請求人は賃貸人と接触した事実がなく,その必要性もなかったことや,②賃借料の支払は契約締結時から一貫して賃貸人の口座に振り込まれており,その支払時に賃貸人から領収書等の住所がわかる書類が交付された事実は認められないことなどを理由として挙げている。

単に“知らなかった”だけと認定されないためにも,取引の契約締結時に,相手方が源泉徴収の対象者となるのか確認しておくことが肝要だろう。