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[全文公開] 法定監査

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税務署等による調査の一つに「法定監査」がある。“調査”と聞いて税務調査を思い浮かべる人も少なくないだろうが,その中身は似て非なるものだ。

法定監査は,税務職員等の質問検査権に基づき行われる。所得税法や相続税法などの各税法に規定された法定調書の提出者に対して,過去提出した調書の誤りや不備等がないかどうかを確認するものだ( 通法74の2 ①一ロ, 74の3 ①一ロ等)。法令に基づく調書の提出が適切に履行されているか否かが調査の趣旨であるため,提出調書の不足や金額の計算誤りがあったとしても,その事実に基づき,更正処分や加算税が課されることはない。あくまで,過去分のチェックを通じて今後のミスを減らしていくというスタンスだ。

法定監査がある場合,通常,1~2週間前に日程調整の連絡があるケースが多いという。対象となり得る要因として「例年よりも明らかに提出調書が少ない」,「同業他社の業態や規模を比べた場合に提出調書の量に差がある」などが考えられるようだが,特定の事業者だけに“当たり”を付けているわけではない。例えば,業態によっては,提出すべき調書が多く,提出漏れ等が起きがちなケースもある。新たに法定調書の種類が増えた,提出省略基準が見直されたなどの理由から,制度変更に伴う周知徹底を図らなければいけないこともある。対象が偏らないように均一的に監査を行うのが大前提だ。

なお,平成28年1月から法定調書の記載事項にマイナンバーが加わった。マイナンバーについては前述のように,あくまで制度変更に伴い,監査時にチェックする記載事項の一つとして確認をしているようだ。ただ,監査があるときには,提出者により注視してもらいたい事項として,マイナンバーの記載を呼び掛けているという。