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[全文公開] 仮想通貨の必要経費

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仮想通貨を売却した場合,その所得は原則として雑所得となる。ただ,所得の計算をする上で,差し引くことができる必要経費は業務の遂行上,直接必要であったことが明らかに区分できる部分に限られる( 所法37 , 所令96 )。

そもそも仮想通貨は,電子データのやりとり。売買はインターネットを使わざるを得ない。インターネットに係る支出が家事上と業務上の両方に関わる費用(家事関連費)となる以上,すべてを売却時の必要経費とすることはできず,取引の記録に基づいて,区分する必要がある。「インターネット・スマートフォン等の回線利用料」や「パソコン等の購入費用」などについても,仮想通貨の売却のために必要な支出であると認められる部分の金額に限り,必要経費に算入することができる,とされている(仮想通貨FAQ問9「仮想通貨の必要経費」)。

一方で,書籍代やコンサルティング費用等が必要経費となるか否かも気になるところだ。ただ,これらは一概に算入できる・できないの判断が難しい。例えば,専門性のある参考書籍を継続的に購入した上で売却時の判断材料としている,仮想通貨を売却した場合に相応の所得金額が見込めるためにコンサルティング費用を算入している,などと個別の状況を前提とした上で,それぞれに必要経費の該当性を判断していく必要があるようだ。

なお,過去の裁決では,FX取引に係る雑所得の計算上,パソコンの購入費や通信費等を必要経費に算入できない旨が示された事例もある。その理由としては,「①その支払の事実又は内容が確認できないこと」,「②FX取引に係る雑所得を生ずべき業務の遂行上必要な部分と家事費に係る部分とに区分されていない家事関連費であること」,「③FX取引に係る雑所得を生ずべき業務との関連性が明らかではないこと」のいずれかに該当することを挙げている(平25.3.7 大裁(所)平24-58)。