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[全文公開] 租税特別措置法施行令の一部を改正する政令要綱(政令第121号)

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一 個人所得課税

1  勤労者財産形成住宅(年金)貯蓄非課税制度について,財産形成住宅(年金)貯蓄の利子等に対する遡及課税等の対象とならない災害等の事由による目的外払出しにつき,未婚のひとり親に対する税制上の措置及び寡婦(寡夫)控除の見直しに伴う所要の整備を行うこととする。(第2条の25の2関係)

2  肉用牛の売却による農業所得の課税の特例について,適用対象となる売却の範囲に,農林水産大臣の認定を受けた地方卸売市場において行う肉用牛の売却を加えることとする。(第17条,第39条の26関係)

(注)  上記の改正は,令和2年6月21日以後に地方卸売市場において行う肉用牛の売却について適用する。(附則第9条,第39条関係)

3  収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例について,次の措置を講ずることとする。(第22条関係)

(1) 本特例の適用対象となる配偶者居住権及び配偶者居住権の目的となっている建物の敷地の用に供される土地等を当該配偶者居住権に基づき使用する権利(以下これらを「配偶者居住権等」という。)の消滅等につき取得する補償金等をもって取得をする代替資産の範囲の細目を定める。

(2) 第一種市街地再開発事業等の施行による施設建築物の一部等についての配偶者居住権の取得を希望しない旨の申出に基づき補償金を取得する場合において,本特例の適用対象となるやむを得ない事情によりその申出をしたと認められる場合を定める。

(3) 本特例の適用対象となる配偶者居住権の目的となっている建物又はその敷地の用に供される土地等が収用等をされたことに伴い取得する配偶者居住権等の対価又は配偶者居住権等の損失に対する補償金の細目を定める。

(4) 本特例の適用対象から除かれる第一種市街地再開発事業等の施行者である再開発会社等の株主又は社員が一定の補償金を取得する場合に,配偶者居住権等を有する当該株主又は社員が当該配偶者居住権等の消滅につき一定の補償金を取得する場合を加える。

4  換地処分等に伴い資産を取得した場合の課税の特例について,都市再開発法の権利変換により取得した施設建築物の一部についての借家権を取得する権利等につき譲渡等があった場合において,旧資産のうち譲渡等があったものとみなされる部分の計算方法を定めることとする。(第22条の3関係)

5  低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除について,適用対象から除かれる特殊の関係のある者に対する低未利用土地等の譲渡の細目を定めることとする。(第23条の3関係)

6  次に掲げる書類について,これらの書類の提出に代えて,その書類に記載すべき事項を電磁的方法により提供できることとする。(第25条の9の2,第25条の10の2,第25条の10の4,第25条の10の5,第25条の10の7,第25条の10の8,第25条の10の13,第25条の13の2,第25条の13の5,第25条の13の8関係)

(1) 特定管理口座開設届出書

(2) 特定口座への非課税口座内上場株式等移管依頼書

(3) 特定口座への未成年者口座内上場株式等移管依頼書

(4) 相続上場株式等移管依頼書

(5) 特定口座異動届出書(勘定の設定若しくは廃止又は営業所の移管に係るものに限る。)

(6) 特定口座継続適用届出書

(7) 特定口座廃止届出書

(8) 特定口座開設者死亡届出書

(9) 源泉徴収選択口座内配当等受入終了届出書

(10) 非課税口座異動届出書(勘定の変更又は令和6年分以後の累積投資勘定の設定に係るものに限る。)

(11) 非課税口座移管依頼書

(12) 非課税口座開設者死亡届出書

(13) 出国移管依頼書

(14) 未成年者帰国届出書

(15) 未成年者口座移管依頼書

(16) 未成年者口座開設者死亡届出書

(17) 未成年者出国届出書

7  特定口座内保管上場株式等の譲渡等に係る所得計算等の特例について,特定口座に受け入れることができる上場株式等の範囲に,上場株式等以外の株式等につき,取得請求権付株式の請求権の行使等により取得する上場株式等で,その取得する上場株式等の全てをその取得の日に受け入れるもの等を加えることとする。(第25条の10の2関係)

8  非課税口座内の少額上場株式等に係る譲渡所得等の非課税について,次の措置を講ずることとする。(第25条の13,附則第18条関係)

(1) 非課税口座に設けられた他年分特定累積投資勘定から累積投資勘定に移管がされる累積投資上場株式等の取得に要した金額の計算方法及び特定非課税管理勘定に受け入れることができる上場株式等から除外されるものの範囲の細目等を定める。

(2) 居住者等が令和5年12月31日に金融商品取引業者等の営業所に開設している非課税口座に令和5年分の非課税管理勘定を設定している場合において,令和6年1月1日以後に当該金融商品取引業者等と特定非課税累積投資契約を締結したものとみなされる措置について,その対象から除外される居住者等の範囲の細目を定める。

9  未成年者口座内の少額上場株式等に係る譲渡所得等の非課税措置について,未成年者口座等からの移管等が契約不履行等事由に該当しないこととなる災害等事由につき,未婚のひとり親に対する税制上の措置及び寡婦(寡夫)控除の見直しに伴う所要の整備を行うこととする。(第25条の13の8関係)

10 公益法人等に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税措置について,次の措置を講ずることとする。(第25条の17関係)

(1) 承認に係る特例の対象法人の範囲に,認定特定非営利活動法人等であって,その贈与等に係る財産を特定管理方法により管理する等の要件を満たしたものを加える。

(2) 贈与等に係る財産を特定管理方法により管理する場合における非課税措置の継続適用の特例の対象法人の範囲に,認定特定非営利活動法人等を加える。

(3) 法人税法別表第一に掲げる独立行政法人又は地方独立行政法人(博物館等の設置及び管理の業務を主たる目的とするものに限る。)に対する贈与等に係る財産で一定の有形文化財に該当するものが,当該贈与等があった日から2年を経過する日までの期間内に,文化観光拠点施設を中核とした地域における文化観光の推進に関する法律の認定拠点計画等に記載された一定の事業のうち公益目的事業に該当するもので同法の文化観光拠点施設において行われるものの用に直接供され,又は供される見込みであることを証する書類の添付がある申請書の提出があった場合において,当該申請書の提出があった日から1月以内に国税庁長官の承認をしないことの決定がなかったときは,その承認があったものとみなす。

(注)  上記(3)の改正は,文化観光拠点施設を中核とした地域における文化観光の推進に関する法律の施行の日以後にされる財産の贈与等について適用する。(附則第22条関係)

11  国外中古建物の不動産所得に係る損益通算の特例について,本特例の適用対象となる国外不動産所得の損失の金額の計算及び本特例の適用を受けた国外中古建物を譲渡した場合においてその取得費から控除することとされる償却費の額の累積額から控除する額の計算の細目等を定めることとする。(第26条の6の3関係)

12  公益社団法人等に寄附をした場合の所得税額の特別控除について,次の措置を講ずることとする。(第26条の28の2関係)

(1) 対象となる学校法人等が閲覧対象とすべき書類の範囲に,役員に対する報酬等の支給の基準等を加える。

(2) 対象となる国立大学法人,大学共同利用機関法人,公立大学法人及び独立行政法人国立高等専門学校機構の要件並びにこれらの法人に対する寄附金の要件を定める。

(3) いわゆるパブリック・サポート・テストの絶対値要件における判定基準寄附者について,その判定に用いる寄附金の範囲から一定のものを除外する。

13  特定新規中小会社が発行した株式を取得した場合の課税の特例について,適用控除対象特定新規株式の取得価額から控除される適用対象額の限度額を800万円(現行:1,000万円)に引き下げることとする。(第26条の28の3関係)

(注)  上記の改正は,令和3年分以後の所得税について適用するとともに,所要の経過措置を講ずる。(附則第26条関係)

二 法人課税

1  法人課税信託の受託者等に関する通則について,法人課税信託の受託法人が交際費等の損金不算入制度における接待飲食費の特例の対象となるかどうかの判定方法を資本又は出資を有しない法人と同様とすることとする。(第1条の2関係)

2  試験研究を行った場合の特別税額控除制度について,特別試験研究の対象となる国の指定を受けた医薬品等に関する試験研究に,国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所からの助成金の交付を受けて行われる特定用途医薬品等に関する試験研究を加えることとする。(第5条の3,第27条の4,第39条の39関係)

3  認定特定高度情報通信技術活用設備を取得した場合の特別償却又は特別税額控除制度について,対象となる認定特定高度情報通信技術活用設備の範囲等を定めることとする。(第5条の6の4の2,第27条の12の5の2,第39条の47関係)

4  特定の資産の買換えの場合等の課税の特例について,次の見直しを行うこととする。(第25条,第39条の7,第39条の106関係)

(1) 既成市街地等の内から外への土地等の買換えについて,譲渡資産の対象区域から除外される区域に工場等が相当程度集積している区域を加える。

(2) 船舶から船舶への買換えについて,次の見直しを行うこととする。

  • ① 譲渡資産となる船舶のうち建設業又はひき船業用のものにおける進水の日から譲渡の日までの期間の上限を35年(現行:40年)に引き下げる。

    ② 買換資産となる船舶のうち海洋運輸業又は沿海運輸業用のものにおける進水の日から取得の日までの期間を法定耐用年数以下とする要件を加える。

5  特別新事業開拓事業者に対し特定事業活動として出資をした場合の課税の特例について,対象となる特定株式の範囲,損金算入額の限度となる所得金額の計算方法及び益金算入額の計算方法の細目等を定めることとする。(第39条の24の2,第39条の122関係)

6  中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例について,対象となる事業者の範囲を常時使用する従業員の数が500人以下の事業者とするとともに,対象となる法人から連結法人に該当する法人を除外することとする。(第18条の5,第39条の28関係)

7  投資法人に係る課税の特例における事業年度終了の時において有する特定の資産の総資産に対する割合が2分の1超であることとの要件について,その特定の資産の範囲に含めることができる再生可能エネルギー発電設備の取得期限を3年延長することとする。(第39条の32の3関係)

8  次に掲げる租税特別措置における損金算入額の限度となる所得金額等の計算方法について所要の整備を行うこととする。(第33条の4,第33条の5,第35条,第36条~第37条の3,第39条の31,第39条の84の2,第39条の84の3,第39条の89,第39条の90~第39条の92,第39条の125関係)

(1) 関西国際空港用地整備準備金

(2) 中部国際空港整備準備金

(3) 新鉱床探鉱費又は海外新鉱床探鉱費の特別控除

(4) 沖縄の認定法人の課税の特例

(5) 国家戦略特別区域における指定法人の課税の特例

(6) 農業経営基盤強化準備金

(7) 農用地等を取得した場合の課税の特例

(8) 組合事業等による損失がある場合の課税の特例

三 国際課税

1  外国法人等が非課税適用申告書等の提出をする際,その提出を受ける者が,当該非課税適用申告書等に記載されている一定の事項につき,行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の規定により公表された当該外国法人等の一定の事項と同じであることの確認をした場合には,当該外国法人等は,本人確認書類の提示を要しないこととし,その提出を受ける者は,本人確認書類による一定の事項の確認を要しないこととする。(第3条~第3条の2の2,第26条の20,第26条の30,第27条,第27条の2関係)

2  対象純支払利子等に係る課税の特例について,対象外支払利子等の額の計算方法の細目を定めることとする。(第39条の13の2,第39条の113の2関係)

3  内国法人等の外国関係会社に係る所得の課税の特例等について,次の見直しを行うこととする。(第25条の19の3,第25条の22の3,第25条の27,第25条の30,第39条の17の3,第39条の18,第39条の20の4,第39条の20の7,第39条の117の2,第39条の118,第39条の120の4,第39条の120の7関係)

(1) 部分対象外国関係会社に係る部分合算課税の対象となる受取利子等の額から一定の棚卸資産の販売から生ずる利子の額を除外する。

(注)  上記の改正は,外国関係会社の令和2年4月1日以後に開始する事業年度に係る部分適用対象金額について適用する。(附則第23条,第36条,第46条関係)

(2) 特定目的会社等である内国法人が納付した外国法人税の額とみなされる金額の計算方法の細目等を定める。

(3) 特殊関係株主等である内国法人等に係る外国関係法人に係る所得の課税の特例について所要の改正を行う。

四 資産課税

農地等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度について,特例適用農地等の範囲に地区計画農地保全条例による制限を受ける一定の地区計画の区域内にある農地を加えることに伴う所要の整備を行うこととする。(第40条の6,第40条の7関係)

五 消費課税

1  法人の確定申告書の提出期限の特例の適用を受ける場合における消費税の免除に係る書類の保存期間について所要の整備を行うこととする。(第45条の4,第46条関係)

2  ビールに係る酒税の税率の特例について,ビールの製造免許を受けていない者が事業譲渡によりビールの製造業を承継した場合については,当該事業譲渡に係る譲渡者が初めてビールの製造免許を受けた日にビールの製造免許を受けたものとみなして,本特例を適用することとする。(第46条の8関係)

3  バイオエタノール等揮発油に係る揮発油税等の課税標準の特例について,その対象となるバイオエタノール等の範囲にカーボンリサイクル技術を用いて製造されたエタノール等を加えることに伴う所要の整備を行うこととする。(第46条の12,第46条の13,第46条の16関係)

その他所要の規定の整備を行うこととする。

七 施行期日

この政令は,別段の定めがあるものを除き,令和2年4月1日から施行することとする。(附則第1条関係)