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[全文公開] 資料 グループ通算制度に関する取扱通達の主要項目について(2年10月5日)

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令和2年3月及び6月の所得税法等の一部を改正する法律(令和2年法律第8号)及び関係政省令の公布により,連結納税制度を見直し,グループ通算制度へ移行することとされ,令和4年4月1日以後に開始する事業年度から適用することとされました。

このグループ通算制度は,完全支配関係にある企業グループ内の各法人を納税単位として,各法人が個別に法人税額の計算及び申告を行い,その中で,損益通算等の調整を行う制度です。併せて,後発的に修更正事由が生じた場合には,原則として他の法人の税額計算に反映させない(遮断する)仕組みとされており,また,グループ通算制度開始・加入時の時価評価課税及び欠損金の持込み等について組織再編税制と整合性の取れた制度とされました。

これに伴い,令和2年9月30日付課法2-33ほか2課共同「グループ通算制度に関する取扱通達の制定について」(法令解釈通達)を新たに定めることとし,その主な内容は次のとおりです。

第1 法人税法関係

1 第2条《定義》関係

○ 他の通算法人に修更正があった場合の本税に係る通算税効果額の利益積立金額の計算(2-2)

通算法人が,当該通算法人又は他の通算法人の修更正の事実による当該通算法人又は当該他の通算法人の修正申告若しくは更正の対象となる法人税又は地方法人税の額につき通算税効果額の授受をすることとしている場合に,他の通算法人が修正申告を行い又は更正を受けたこと(損益通算(法64の5⑤)や欠損金の通算(法64の7④~⑦)などのいわゆる遮断措置が適用されるものに限ります。)による当該他の通算法人の修正申告又は更正の対象となる法人税又は地方法人税の額につき通算税効果額を授受するときは,当該通算法人がその授受する通算税効果額のうち本税に係る額について,当該修更正の事実があった日の属する当該通算法人の事業年度に係る利益積立金額の増減として計算することができることを明らかにしています。

2 第14条《事業年度の特例》関係

○ 完全支配関係法人がある場合の加入時期の特例の適用(2-4)

内国法人と他の内国法人との間に当該内国法人による完全支配関係がある場合において,当該内国法人が加入時期の特例( 法14 ⑧一)の適用を受けるときは,当該他の内国法人もその特例の適用を受けることを留意的に明らかにしています。

○ 通算法人が他の通算グループに加入する場合の加入時期の特例の適用(2-5)

通算親法人の発行済株式又は出資の全部が他の通算グループに属する通算法人(他の通算親法人及び他の通算子法人)に保有されることとなったことにより,当該通算親法人及びその通算子法人が当該他の通算グループに属する通算法人との間に完全支配関係を有することとなった場合における当該通算親法人及び当該通算子法人について,①これらの通算親法人及び通算子法人はいずれも加入時期の特例( 法14 ⑧)の適用を受けることができること,②これらの通算親法人及び通算子法人が加入時期の特例( 法14 ⑧一)の適用を受ける場合でも,当該通算親法人及び当該通算子法人の事業年度は,当該他の通算グループに属する通算法人による完全支配関係を有することとなった日の前日に終了すること,を留意的に明らかにしています。

3 第41条《法人税額から控除する外国税額の損金不算入》関係

○ 通算法人が外国法人税の一部につき控除申告をした場合の取扱い(2-10)

通算法人又は他の通算法人が,当該事業年度において納付する外国法人税の額(控除対象外国法人税の額に限ります。)の一部につき外国税額の控除( 法69 )の規定の適用を受ける場合であっても,全ての通算法人が当該事業年度において納付する外国法人税の額の全部が損金の額に算入されないことを留意的に明らかにしています。

4 第57条《欠損金の繰越し》関係

○ 完全支配関係グループが通算グループに加入する場合のいずれかの主要な事業の意義(2-14)

繰越欠損金の持込制限( 法57 ⑧)が不適用とされるいわゆる共同事業に係る要件における「いずれかの主要な事業」とは,完全支配関係グループが通算グループに加入する場合にあっては,当該完全支配関係グループに属するいずれかの法人にとって主要な事業ではなく,当該完全支配関係グループにとって主要な事業であることをいうことを留意的に明らかにしています。

(注)  下記7,10及び第64条の14《特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入》関係においても,それぞれ同様の取扱いを定めています(2-24(2),2-50,2-60(2))。

○ 新たな事業の開始の意義(2-15)

繰越欠損金の持込制限( 法57 ⑧)の適用要件である「新たな事業を開始した」とは,その通算法人において既に行っている事業とは異なる事業を開始したことをいうのであり,例えば,既に行っている事業において次の(1)及び(2)のような事実があっただけではこれに該当しないことを明らかにしています。

(1) 新たな製品を開発したこと

(2) その事業地域を拡大したこと

(注)  第64条の14《特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入》関係においても,同様の取扱いを定めています(2-60(3))。

5 第61条の2《有価証券の譲渡益又は譲渡損の益金又は損金算入》関係

○ 通算子法人の通算離脱の時価評価と通算子法人株式の投資簿価修正の順序(2-17)

投資簿価修正( 令119の3 ⑤)について,その適用対象となる株式を発行した通算子法人が通算制度からの離脱等に伴う資産の時価評価(法64の13①)の適用を受ける場合には,その時価評価がされたことに基因して増額又は減額がされた後のその通算子法人の資産及び負債(新株予約権に係る義務を含む。)の帳簿価額を基礎としてその株式の帳簿価額の計算を行うことを留意的に明らかにしています。

6 第64条の5《損益通算》関係

○ 通算グループから中途離脱した通算法人についての損益通算の適用(2-20)

損益通算の規定(法64の5)の適用がある所得事業年度(法64の5①)及び欠損事業年度(法64の5③)は,通算法人に係る通算親法人の事業年度終了の日に終了するものに限られるため,当該通算親法人の事業年度の中途において当該通算親法人との間に通算完全支配関係を有しなくなったことにより通算承認の効力を失った通算法人のその有しなくなった日の前日に終了する事業年度については,損益通算の規定の適用はないことを留意的に明らかにしています。

(注)  欠損金の通算( 法64の7 )などグループ全体計算について同旨の定めが置かれた他の制度においても,同様の取扱いとなります。

○ 期限内申告書を提出しなかった法人に係る損益通算の取扱い(2-21)

損益通算において,いわゆる遮断措置(当初申告額に固定する措置)の規定(法64の5⑤)が適用される場合の当初申告額は,期限内申告における記載額であるから,期限内申告書を提出しなかった通算法人に係る損益通算に用いる通算前所得金額及び通算前欠損金額は零となり,損益通算の規定の適用によりその通算法人の損金の額又は益金の額に算入される金額は,ないこととなることを留意的に明らかにしています。

(注)  欠損金の通算(法64の7)などグループ全体計算の遮断措置が設けられた同旨の他の制度においても,同様の取扱いとなります。

7 第64条の6《損益通算の対象となる欠損金額の特例》関係

○ 償却費として損金経理をした金額の意義(2-25)

その事業年度に生ずる欠損金の全額を損益通算の対象外とする多額の償却費が生ずる事業年度(法64の6③)の要件における「償却費として損金経理をした金額」には,基本通達7-5-1《償却費として損金経理をした金額の意義》又は7-5-2《申告調整による償却費の損金算入》の取扱いにより償却費として損金経理をした金額に該当するものとされる金額が含まれることを留意的に明らかにしています。

8 第64条の7《欠損金の通算》関係

○ 特定欠損金額の損金算入の順序及び損金算入額の上限(2-26)

一の事業年度において生じた欠損金額のうちに特定欠損金額(法64の7②③)が含まれる場合には,①欠損金額の一部のみが特定欠損金額であるときは,当該特定欠損金額に相当する金額から損金算入を行うこと,②適用事業年度において損金算入できる特定欠損金額の上限は,たとえ当該通算法人が中小法人等( 法57 ⑪一)以外の法人に該当するときであっても,欠損控除前所得金額(法64の7①三イ)に達するまでの金額を基礎として計算した金額となること,を留意的に明らかにしています。

9 第64条の11《通算制度の開始に伴う資産の時価評価損益》関係

○ 通算制度の開始に伴う時価評価資産等に係る時価の意義(2-40)

時価評価資産の「その時の価額」は,使用収益されるものとしてその時において譲渡されるときに通常付される価額によるのであるが,次に掲げる資産について,次に掲げる区分に応じそれぞれ次に掲げる方法その他合理的な方法(通算制度の開始に伴う離脱見込み通算子法人株式の時価評価(法64の11②)の通算子法人株式については(3)の方法その他合理的な方法)により当該資産のその時の価額を算定しているときは,課税上弊害がない限り,これを認めることを明らかにしています。

(1) 減価償却資産…再取得価額を基礎とした旧定率法又は定率法による未償却残額とする方法等

(2) 土地…近傍類地の売買実例又は公示価格等から算定する方法

(3) 有価証券…市場有価証券等の最終の気配相場の価格等を基礎として算定する方法等

(4) 金銭債権…金銭債権の額から個別評価金銭債権の貸倒引当金に係る金額を控除した金額又は帳簿価額とする方法

(5) 繰延資産…帳簿価額又は未償却残額とする方法

(注)  下記10及び第64条の13《通算制度からの離脱等に伴う資産の時価評価損益》関係においても,それぞれ同様の取扱いを定めています(2-47,2-56)。

10 第64条の12《通算制度への加入に伴う資産の時価評価損益》関係

○ 通算法人が他の通算グループに加入する場合の資産に係る時価評価(2-53)

通算親法人の発行済株式の全部が他の通算グル-プに属する通算法人(他の通算親法人及び他の通算子法人)に保有されることとなったことにより,当該通算親法人及びその通算子法人が当該他の通算親法人との間に当該他の通算親法人による通算完全支配関係を有することとなった場合における当該通算親法人及び当該通算子法人が当該通算完全支配関係を有することとなった日の前日に有する資産について,①通算制度への加入に伴う資産の時価評価(法64の12①)及び通算制度からの離脱等に伴う資産の時価評価(法64の13①)のいずれもが適用されること,②通算制度からの離脱等に伴う資産の時価評価を先に適用すること,を留意的に明らかにしています。

○ 通算法人が他の通算グループに加入する場合の通算子法人株式の投資簿価修正と加入の時価評価の適用関係(2-55)

上記の2-53《通算法人が他の通算グループに加入する場合の資産に係る時価評価》の場合における当該通算親法人及び当該通算子法人が有する通算子法人株式に係る通算制度への加入に伴う資産の時価評価(法64の12②)の適用に当たっての通算子法人株式の帳簿価額は,投資簿価修正( 令119の3 ⑤)の規定による計算をした後の金額となることを留意的に明らかにしています。

11 第66条《各事業年度の所得に対する法人税の税率》関係

○ 大通算法人であるかどうかの判定の時期(2-61)

大通算法人に該当するかどうかの判定(大通算法人判定)は,当該通算法人及び他の通算法人(当該通算法人の中小軽減税率( 法66 ⑥)の規定の適用を受けようとする事業年度(適用事業年度)終了の日において当該通算法人との間に通算完全支配関係がある法人に限ります。)の適用事業年度終了の時の現況によるが,通算親法人の事業年度の中途において通算承認の効力を失った通算法人のその効力を失った日の前日に終了する事業年度の大通算法人判定についても,同様の取扱いとすることを明らかにしています。

(注)  上記4におけるいわゆる新設法人の判定の時期についても,同様の取扱いを定めています(2-16)。

12 第69条《外国税額の控除》関係

○ 進行年度調整規定の適用に係る対象事業年度の意義等(2-67)

いわゆる進行年度調整規定( 法69 ⑰⑱)は,通算法人の過去適用事業年度に係る期限内申告における外国税額控除額が誤っていたことが期限内申告後に判明した場合に適用があるが,具体的には次の取扱いとなることを明らかにしています。

(1) その判明した日(過去適用事業年度に係る修更正が必要となる場合には,その過去適用事業年度に係る修更正が行われる日)の属する通算法人の事業年度を対象事業年度として適用する。

(2) その判明した日が過去適用事業年度に係る期限内申告書の法定申告期限から5年(偽りその他不正の行為により税額を免れ又は還付を受けた場合の7年その他国税通則法( 通法70 )に定める除斥期間)を経過した日以後である場合には,適用されない。

第2 租税特別措置法関係

1 第42条の4《試験研究を行った場合の法人税額の特別控除》関係

○ 通算法人に係る中小企業者であるかどうかの判定の時期(3-2)

通算法人に係る本制度の中小企業者に該当するかどうかの判定(中小判定)は,当該通算法人及び他の通算法人(当該通算法人の本制度の適用を受けようとする事業年度(適用事業年度)終了の日において当該通算法人との間に通算完全支配関係がある法人に限ります。)の適用事業年度終了の時の現況によるものとし,通算親法人の事業年度の中途において通算承認の効力を失った通算法人のその効力を失った日の前日に終了する事業年度における中小判定についても,同様の取扱いとすることを明らかにしています。

2 第42条の11の3《地方活力向上地域等において特定建物等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除》関係

○ 通算法人に係る中小企業者であるかどうかの判定の時期(3-4)

通算法人に係る本制度の中小企業者に該当するかどうかの判定(中小判定)は,当該通算法人及び他の通算法人(次の(1)又は(2)の日及び次の(3)の日のいずれにおいても当該通算法人との間に通算完全支配関係がある法人に限ります。)の当該(1)及び(2)の日の現況によるものとし,通算親法人の事業年度の中途において通算承認の効力を失った通算法人のその効力を失った日の前日に終了する事業年度における中小判定についても,同様の取扱いとすることを明らかにしています。

(1) 当該通算法人が本制度の対象資産の取得又は建設をした日

(2) 当該通算法人が本制度の対象資産を事業の用に供した日

(3) 当該通算法人の本制度の適用を受けようとする事業年度終了の日

(注)  第43条の3《被災代替資産等の特別償却》における中小企業者等であるかどうかの判定の時期についても,同様の取扱いを定めています(3-5)。