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[全文公開] 災害とコロナ特例猶予

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今夏は,新型コロナウイルスの感染拡大だけでなく,令和2年7月豪雨等の多くの災害に見舞われたことで,納税が困難となった者も多いだろう。災害後は,どちらの影響により納税が困難となったのか判断がつきにくいが,被災地の納税者が,両方の影響により収入の減少等が生じた場合には,「納税猶予の特例(特例猶予)」を適用することができる。

特例猶予は,新型コロナの影響により納税が困難な場合に,“おおむね20%以上の収入の減少”等の要件を満たせば適用することができる制度で,延滞税なし,無担保で1年間の納税猶予が受けられる(新型コロナ税特法3等)。

新型コロナの影響は直接・間接を問わない(国税庁「国税の納税の猶予制度FAQ」問20)ため,災害の影響が挙げられる納税者であっても,新型コロナの影響を否定できない場合は特例猶予の適用が可能だ。

例えば,納税者の8月以降の収入が,7月豪雨により減少した場合でも,コロナ禍で営業時間を短縮していれば,新型コロナの影響を否定できないため,特例猶予を適用できる。

なお,一定の要件を満たした場合は,特例猶予のほかに,災害等により納付困難となった場合の納税の猶予( 通法46 ②)を適用することもできる。同猶予は,延滞税の納付や担保の提供が必要となるケースもあるが,既に認められている猶予期間と合わせて2年を超えない期間内で猶予期間の延長が可能だ( 通法46 ⑦)。

したがって,納税者は延滞税や猶予期間等を鑑みて,より有利な制度を選択することができるが,今般の状況においては,特例猶予の方がより迅速な対応が受けられるという。