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[全文公開] 同族会社発行の社債利子

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12月10日公表の令和3年度税制改正大綱では,総合課税の対象となる社債利子等の範囲を見直すこととされた。現行の,同族会社の役員等が支払いを受ける社債利子等に加え,一定の個人が同族会社との間に法人を介在させる場合についても総合課税の対象とする方向だ。

現行制度において,公社債等は,国債や地方債,上場公社債などの「特定公社債等」とそれ以外の「一般公社債等」に区分され,一般公社債等の利子は,原則,利子所得として源泉分離課税とされている( 措法3 )。ただし,一般公社債等の利子のうち,少人数私募債のように,同族会社が発行した社債の利子で,その同族会社の役員等の一定の株主等が支払いを受けるものについては総合課税の対象とされている( 措法3 ①四)。これは,同族会社の役員等が,本来総合課税で所得に応じた累進税率(所得税率5~45%)が適用されるべき役員報酬等を社債利子の形で受け取り,源泉分離課税(所得税率15%,住民税率5%)を適用することで税負担を軽減するという節税策を封じるために平成25年度改正で設けられた措置だ。

例えば,年間3,000万円の所得のある者が受け取った社債利子20万円について,その者が同族会社の一定の株主等に該当しない場合は,利子所得として源泉分離課税が適用され,15%の所得税が課税される。一方で,この者が同族会社の一定の株主等に該当する場合は,受け取った社債利子は総合課税の対象となる利子所得として40%の税率で所得税が課税されることとなる( 所法89 ①)。

令和3年度改正では,一定の個人が同族会社との間に法人を介在させる場合に,その同族会社から支払いを受ける社債利子等についても,分離課税への転換が容易であるとして見直すこととされている。