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[全文公開] 使用人兼務役員の昇進と退職給与

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使用人が役員に昇進した際に支払われる使用人部分の退職給与は,退職給与規程に基づくものであれば,原則,損金算入できる( 法基通9-2-36 )。これに対し,使用人が使用人兼務役員に昇進後,さらに常務取締役等への昇進とともに使用人としての職務を有しなくなった場合,使用人部分に対する退職給与は一定の要件を満たさないと損金算入できないとされている( 法基通9-2-37 )。

一定の要件とは次の4つ。

① 支給対象者が,使用人から使用人兼務役員に昇進した者であること

② 使用人兼務役員昇進時に使用人期間に係る退職給与を支給していないこと

③ 支給額が,使用人の退職給与規程に基づき,使用人期間と使用人兼務役員期間を通算して,使用人の職務に対する退職給与として計算されていること

④ 退職給与として相当であると認められる金額であること

実務上,使用人部分に対する退職給与の支給時期については,使用人兼務役員でなくなる時のほか,退職時に役員部分とあわせて支給するケースも多いだろう。この場合,いずれの支給時期でも要件②を満たすものとして取り扱ってよいという。

例えば,平成22年6月に使用人として入社した者が,令和2年6月に使用人兼務役員へ昇進後,令和4年6月に取締役副社長に就任し,令和5年6月に法人を退職(副社長を退任)したとする。この場合,入社時から使用人兼務役員として勤務した期間の12年間(平成22年6月~令和4年5月末)に対応する使用人部分の退職給与を,取締役副社長就任時(令和4年6月)又は退職時(令和5年6月)に支給することで,要件②を満たすことになる。