[全文公開] 執行役員の打切支給と退職所得

執行役員は,会社法上の役員には該当せず,法人税法上でも原則として役員ではなく使用人として取り扱われる。ただ,使用人が執行役員に昇進した際に打切支給される使用人部分の退職金は,所得税法上,一定の要件を満たせば,常務取締役など役員昇進時の打切支給( 所基通30-2 (2))と同様に,退職所得に該当する。
退職所得に該当するためには,例えば次の2点を満たす執行役員制度の下で支給する必要がある( 所基通30-2の2 )。
(1)執行役員との契約は委任契約等で,かつ,執行役員退任後の使用人としての再雇用が保障されていないこと
(2)執行役員に対する報酬,福利厚生等は役員に準じたもので,背反行為等で使用者に生じた損害賠償責任を負うこと
執行役員の中には,業績や働きぶりが認められるなどして,さらに常務取締役等に昇進する者もいるだろう。この場合,使用人としての再雇用ではないため上記(1)に反しないとして,執行役員就任時に支給した使用人部分の退職金は退職所得に該当する。その後,役員昇進時に支給される執行役員部分の退職金についても,使用人(執行役員)から役員の昇進として退職所得に該当するという。
例えば,平成22年6月に入社した使用人が,令和2年6月に執行役員へ昇進後,令和4年6月に常務取締役に就任した場合,執行役員昇進時に支給される使用人部分(H22年6月~R2年5月末)の退職金,常務取締役就任時に支給される執行役員部分(R2年6月~R4年5月末)の退職金は,いずれも退職所得に該当する。
なお,上記(1)(2)を充足しない場合でも,執行役員就任で勤務関係の性質,労働条件等に重大な変動があり,実質的に見て単なる従前の勤務関係の延長ではないと認められれば退職所得に該当する。
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