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[全文公開] 一時帰国した日本人社員の給与

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長引くコロナ禍の影響で日本に一時帰国している海外子会社社員である非居住者が赴任地国へ戻れず,日本滞在日数が183日,さらには1年を超えてしまう事態が生じている。

日本滞在日数が183日を超え“短期滞在者免税”の対象外になると,給与のうち日本勤務分が日本での課税対象になる。また,1年を超えると「日本の居住者」へとステータスが変わり,国外源泉所得を含めた全ての所得について確定申告義務が生じる点に注意が必要だ( №36693684 )。

そもそも非居住者は,国内源泉所得のみが日本での課税の対象となる( 所法7 )。

国内源泉所得には,「給料,賞与,人的役務の提供に対する報酬のうち国内において行う勤務その他の人的役務の提供に基因するもの」が含まれる( 所法161 ①十二イ)。例えば,非居住者が出張等で来日し日本で業務を行った場合,物理的に勤務している場所が日本であるため,原則,日本での勤務に対応する給与相当額が日本の国内源泉所得に該当する。

加えて,日本が締結している多くの租税条約で,非居住者の日本での滞在期間が短期間である等の一定の要件を満たす場合に日本での課税を免除する“短期滞在者免税”が置かれている。例えば,日米租税条約では,一方の締約国(米国)の居住者の他方の締約国(日本)内での滞在期間が183日以内でかつ一定の要件を満たす場合には,他方の締約国(日本)で課税しないこととしている(日米租税条約14②)。そのため,出張等で来日する機会が多い者であっても,いわゆる183日ルールがあることにより日本勤務分について日本で課税されるケースは少なかった。

間もなく確定申告期を迎えるが,一時帰国者については居住者・非居住者の判定,短期滞在者免税の判定と様々な点で留意が必要といえよう。