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[全文公開] 持続化給付金の自主返還と所得計算

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持続化給付金の不正受給問題が世間を騒がせた。中小企業庁は、給付要件を満たさないにも関わらず誤って申請し、給付金等を受給した場合、自主返還を呼び掛けている。受給者が申請誤りにより自主返還した場合、受給した年と返還した年の所得計算にどのような影響が及ぶか気になるが、その対応は受給者の所得区分に応じて異なる。

所得税法では、事業所得者を除き、その年分の所得金額の計算の基礎となる収入金額等につき、「その全部又は一部を回収することができないこととなった場合、又は一定の事由によりその全部又は一部を返還することとなった場合、回収できなかった金額・返還すべきとなった金額は、所得計算上なかったものとみなす」とする特例が置かれている( 所法64 ①)。

コロナ禍に減収した事業者支援のための持続化給付金は、本業の収入に係る所得区分に応じて、事業所得・一時所得・雑所得の3つに分かれる( №36253630 、国税庁コロナFAQ(4の問9-2))。すなわち、前述の特例を踏まえた場合、各年の所得計算の対応は、事業所得者以外と事業所得者に分かれることとなる。

例えば、所得計算の対応関係を分かりやすくするため、令和3年分(受給年)と令和4年分(返還年)で考える。仮に、事業所得者以外が申請誤りにより100万円全額を自主返還した場合であれば、令和3年分の所得金額(100万円)はなかったものとみなされ、その所得金額に対応する納税額分は更正の請求により還付を受けることができる。納税額分は受給者の持出しであることから差し引きゼロとなる。

一方、事業所得者が本来80万円しか受給できないところ、申請誤りにより100万円を受給し、差額20万円を自主返還した場合には、事業所得の計算上、所得となるはずだった金額は事業所得を生ずべき業務について生じた費用( 所法37 )として、令和4年分での必要経費にすることができる。なお、令和3年分と令和4年分の収支で帳尻が合うことから、更正の請求を行う必要はないという。