※ 記事の内容は発行日時点の情報に基づくものです

[全文公開] テレワークの交通費と社会保険料

( 45頁)

先般、働き方の多様化を推進する観点から、とある大企業が全従業員の半数を原則テレワークとする報道が話題となった。原則テレワークの従業員が一時的に出社する際の電車代等の額が、社会保険料の算定基礎となる「報酬」に該当するか否かは、“労働契約上の労務の提供地”によって異なる。

社会保険料は、1か月に支給された報酬を一定の幅(等級)で区分し決定される標準報酬月額によって確定する。ここでの「報酬」とは、名称を問わず従業員が労働の対償として受け取るもの(厚生年金保険法3①三等)。原則出社の場合の通勤手当は、経常的実質的収入の意義を有し労働の対償として従業員が受け取るものであるから、報酬に含まれる。一方、職務遂行上支出する出張旅費は、労働の対償ではなく実費弁償的なものであるから、報酬に含まれない(日本年金機構「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」報酬・賞与の範囲について)。

原則テレワークをする従業員が一時的な出社で支出した電車代等は、“労働契約上の労務の提供地”が、①事業所か、②自宅かによって「報酬」の該当性が異なる(同事例集・在宅勤務・テレワークにおける交通費及び在宅勤務手当の取扱いについて)。

前述の①事業所の場合、原則テレワークだとしても、“労働契約上の労務の提供地”が事業所である以上、出社する際の電車代等は通勤手当(労働の対償)として報酬に含まれる。一方、前述の②自宅の場合、業務命令により一時的に出社し、その電車代等の実費を会社が負担するのであれば、出張旅費と同様に実費弁償(労働の対償ではない)として報酬に含まれない。

テレワークを導入する企業が、社会保険料の算定において従業員の電車代等を報酬に含めずに取り扱うには、従業員の“労働契約上の労務の提供地”を見直すことが求められよう。