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[全文公開] 出向社員と扶養控除等申告書

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新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、従業員の雇用維持等を目的に在籍出向を活用する企業は少なくない。在籍出向した従業員は、出向後の給与の支払者が出向元法人又は出向先法人のいずれになるかによって、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出の対応が異なる。

扶養控除等申告書は、給与支払者から毎年最初に給与の支払を受ける日の前日までに、従業員が給与支払者に提出する必要があり、給与支払者は7年間保存しておかなければならない( 所法194 ①、 所規76の3 )。

在籍出向は、出向元法人及び出向先法人の両社と雇用契約を締結した状態で出向するもので、出向社員の給与は、出向元法人又は出向先法人いずれが支払っても問題ない。

出向後の給与支払者が出向 法人の場合、出向社員は、出向先法人に対して扶養控除等申告書を提出する必要がある。

例えば、従業員Aが、令和4年12月末(出向前)の年末調整時に令和5年分の扶養控除等申告書を出向元X社に提出していたが、令和5年4月から出向先Y社に在籍出向することとなったケースを想定する。出向後の給与支払者が出向先Y社の場合、出向後最初の令和5年4月の給与の支払を受ける前に、令和5年分の扶養控除等申告書をY社に再提出することになる。

一方、出向後の給与支払者が出向 法人の場合、出向社員は、出向元法人に対して既に提出しているので、出向後に改めて扶養控除等申告書を提出する必要はない。

例えば、前述のケースで、給与支払者が出向元X社のままの場合、令和5年分の扶養控除等申告書を提出しなくてよい。

なお、出向元法人との雇用契約を解消する転籍出向の場合、通常、出向先法人が給与支払者となることから、出向後最初の給与の支払を受ける前に出向先法人に対して、扶養控除等申告書の提出が必要となる。