経理実務最前線!Q&A 監査の現場から 第56回 外貨建てのれんの減損リスク

新日本有限責任監査法人 ナレッジ本部企画 公認会計士 山岸 聡

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3年前に行った米国でのM&Aの成果が思わしくありません。100%の株式を取得して連結子会社とし連結決算上,取得時に発生したのれんは5年間の定額法で償却してきましたが,最近の円安の影響で円に換算した損益計算書におけるのれんの償却負担が重くなってきています。併せて,貸借対照表においても回収しなくてはならないのれん残高が当初取得時の想定よりも多くなっている気がします。取得時に予定した事業計画を達成できていないだけでなく,円安に振れた分,のれんの減損リスクが高まってきている気がするのですがどのように考えたらよいでしょうか。

最近ではアベノミクスの効果で,円安に振れた為替相場が輸出企業の業績を後押ししています。しかし,振り返ってみるとつい3年前の日本企業は1$=80円を切る円高が原因で,日本国内で製造して海外に輸出するビジネスモデルに見切りをつけ,海外に生産拠点を移すか,あるいは海外企業を積極的にM&Aで取得した事例が見受けられました。

それから3年が経過し,当時のM&Aの成果を検証・測定できる頃合いになってきた今,M&Aが計画どおりの成果を収めていれば問題ないですが,実績が当初の計画・目標を下...