重要性に関する米国最高裁判所の判決

有限責任あずさ監査法人 パートナー 川西安喜

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はじめに

2010年に米国財務会計基準審議会(FASB)が国際会計基準審議会(IASB)と共通化した概念フレームワークにおいて,重要性 は次のように定義された。

情報は,その脱漏又は誤表示により,特定の報告企業に関する財務情報に基づいて利用者が行う意思決定に影響する可能性がある場合には,重要性がある。言い換えれば,重要性は目的適合性の企業固有の一側面であり,個々の企業の財務報告書の文脈においてその情報が関連する項目の性質若しくは大きさ(又はその両方)に基づくものである。

これに対し,米国では重要性について次のような判断が最高裁判所によって下されており,米国証券取引委員会(SEC)のスタッフもこの見解を支持している。

省略された事実が開示されていれば,利用可能な情報の「組合せ全体」を著しく変更したであろうと合理的な投資家が考える可能性が相当程度ある場合,事実には重要性がある。

概念フレームワークの考え方が意思決定に影響する可能性があれば重要性があるのに対し,最高裁判所の判断では実際に意思決定に影響する可能性が相当程度高い場合にのみ,重要性があるとされるため,会計上の重要性の判断が裁判所の判断に...