経済世相と現代会計 ‐原油価格の急落と資源開発の失敗‐

駒澤大学教授 教授 石川純治

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ちょっとした新聞・雑誌の記事やコラムに,実は現代会計の特質が見えたりする。近時の原油価格の急落と資源開発の失敗といった経済世相が格好の事例といえるが,それが会計のなかにどう現れているか,とりわけそこに現代会計がもつ性格や特徴がどういう形で現れているか。以下,みてみたい。

巨額の在庫評価損,資源開発の減損‐石油元売り会社,商社

原油価格の急落で石油元売り会社の在庫評価損が巨額となり,2015年3月期業績予想の下方修正が相次いでいる(2月5日付「日本経済新聞」)。JX4,300億円,出光1,370億円,富士石油260億円と巨額だ。在庫の評価方法の後入先出法(LIFO)が廃止となり,先入先出法(FIFO)だと直近仕入れの在庫がバランスシートに計上されるから,価格下落が続く状況ではなおさらだ 。直近の在庫評価こそが,直近であるがゆえに,財務実態を適正に表示しているわけで,これが後でも述べるが現代会計の1つの特徴といえる(※補注)。

もう1つは資源開発の減損である。ここには商社が登場する。とりわけシェールガス事業と北海油田事業など資源ビジネス関連で,住友商事1,928億円,丸紅1,480億円,三井物産...