ハーフタイム 工事進行基準の倫理

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取得原価主義会計でも,公正価値会計と同様に,「将来予測」を使うことに変わりはない。代表的ケースは,固定資産の取得原価を期間配分するときに使う,「減価償却の耐用年数見積り①」と,請負契約の収益を期間配分するときに使う「工事進行基準の総コスト見積り②」。ともに見積り数値を分母,経過期間の数値または発生額を分子とする割合によって,費用または収益を期間配分する。①の分母を過大に見積ると償却費用は過少になり,②の分母を過少に見積ると収益は過大になる。見積りには"誠実さ"プラス"一定のルール"が求められる所以である。

企業内の一部の人間による"直感"に頼っていては,決して合理的な予測とはならない。では,一定のルールとは何だろうか。まず客観性を保つため,過去の実績・経験を参考にしながら,これからの資産活用方針や工事コスト削減方針,資材・労賃・為替の相場変動予測などを織込み,予測要因を個別に積み上げて割り出す。しかも,プロジェクトごとに文書化して記録に止め,関係者に閲覧可能としなければならない。ただし,工事進行中の総工事費見積り変更は当然あり得る。金額に重要性があれば,幹部に報告し承認を取り付けるのも当...