判例を読む(中)反対株主の株式買取請求に係る株式買取価格の評価における非流動性ディスカウントの考慮の可否

~最高裁決定平成27年3月26日~

 弁護士・公認会計士・CFA協会認定アナリスト 中村 慎二

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【目次】
一 はじめに 掲載号 No.3220
二 本事案の概要および争点
三 第1審決定,抗告審決定および本決定の内容
四 本決定の分析(1)
五 本決定の分析(2) 本号
六 関連論点(サイズ・プレミアム)
七 関連論点(評価モデル)
八 本決定の適用範囲

五 本決定の分析(2)(判旨②について)

1 非流動性ディスカウントを議論する前提

判旨②において最高裁は,株式買取請求権が与えられた趣旨は「吸収合併等という会社組織の基礎に本質的変更をもたらす行為を株主総会の多数決により可能とする反面,それに反対する株主に会社からの退出の機会を与えるとともに,退出を選択した株主には企業価値を適切に分配するもの」であると述べている。これは従来の先例(最高裁判所第三小法廷決定平成23年4月19日等)と概ね同内容である。判旨②は,この趣旨に照らして,収益還元法を用いて株式の買取価格を決定する場合に,非流動性ディスカウントを行うことができないと判示している。

非流動性ディスカウントを考慮すべきか否かは,株式買取請求権が与えられた趣旨に照らして判断すべきと思われる⑧が,従来の株式買取請求権に関する議論の中では,反対株主に配分すべき企...