ハーフタイム ROEが経営指標として有効になるとき

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最近の企業社会では,株価上昇をめざすROE旋風が吹き荒れている。まず,欧米企業に比べて見劣りするROE(自己資本利益率)を経営目標に据えるべき,少なくとも8%を目標にすべき,といった官民あげての議論が盛んになった。次いで個人投資家はROEが何%かに注目して投資する姿勢を強め,ROE向上が見込める銘柄への投資信託が人気を集める。いままで資本効率を意識したこともない企業であっても,配当性向を50%まで引き上げるとか,自己株式取得を進め,剰余金を減らし,自己資本を減らしても,ROE向上に努めるところが増えている。

わが国の会計制度は永らく収益費用中心だったせいか,伝統的な経営目標の第一は「売上高と営業利益の拡大」であった。ただ,平成14年には,EPS(一株当たり純利益)に関する会計基準が制定され,次第に最終損益,EPS,PERが重視されるように変わってきた。今回のROE重視は,最終利益と資本の効率重視であり,バランスシート重視への転換だ。わが国では,企業は株主の所有物というよりも,従業員や銀行を含む社会的ステークホルダーのものと考える風潮が強く,株主資本だけに注目して,それに対していくら利益を...