金融会計の論点シリーズNo.3 社債の会計

フジタ国際会計コンサルティング(株) 代表 藤田敬司

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はじめに

シリーズNo.1では「自己株式取引」について,No.2では「資本と負債の境界線」について,それぞれの会計上の論点を検討してきた。ここでは,先の2つのテーマと関係が深い「社債会計の仕組み」について考えようとしている。社債は,資本と密接な関係にあるほか,発行体からみれば負債だが,投資家からみれば資産の会計も必要となる。社債の資産会計は,概ね負債会計と裏表の関係にあるが,投資リスクの視点が不可欠になる。社債は,株式との比較では安全資産であるが,デフォルトもあり得るからだ。投資家はクーポン(表面金利)に加えてリスク・プレミアムを要求し,割引債やゼロクーポン債が発行される。ここでは主に,固定利付債を扱うが,現実には変動利付債や仕組み債など多様な社債が発行されている。事業資金調達用の社債には償却原価法が適切であるが,発行体側でも投資家側でも,財務戦略色が濃厚になればなるほど,公正価値オプションを選択する合理性は高くなると思われる。

資金調達における社債発行の意義

社債は,借入金と並ぶ金融負債の代表格であり,社債発行による資金調達は,デット・ファイナンスの典型である。すでにシリーズNo.2でみた...