Q&Aコーナー 気になる論点(145) IASB概念フレームワークの公開草案(11)

-認識の中止と契約の条件変更-

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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国際会計基準審議会(IASB)が,2015年5月28日に公表した公開草案(ED)「財務報告に関する概念フレームワーク」では,契約の条件変更により認識の中止をもたらすことがあるとしています。それは,どういう理由によるものなのでしょうか。

契約の条件変更により,もはや権利・義務がなくなる場合には,それらに基づいて認識されている資産・負債の認識は中止されます。また,既存の権利・義務の一部だけが削減したり消滅と追加が同時に生じたりする契約の条件変更において,EDでは,支配(又は所有に伴うリスクと経済価値)がなくなったとみる場合,認識の中止を行うことを示しています。ただし,どのような場合にそのようにみるか,認識を中止しない場合でも契約の条件変更をキャッチアップで当期純利益に反映するかどうかは,古くて新しい問題です。

<解説>

認識の中止

2015年5月公表のEDにおいて,認識の中止(derecognition)は,以下の場合に生じることを提案しています(5.25項)。

(1) 資産については,通常,企業が過去に認識した資産の全部又は一部に対する支配(control)を失う場合

(2) 負債については,通...