Q&Aコーナー 気になる論点(146) IASB概念フレームワークの公開草案(12)

-相殺表示-

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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国際会計基準審議会(IASB)が,2015年5月に公表した公開草案(ED)「財務報告に関する概念フレームワーク」(概念フレームワークED)では,どのような場合に相殺表示することを提案しているのでしょうか。

概念フレームワークEDにおいて,相殺表示は,異質な項目を一緒に分類するため,一般に適切でないとしていますが,どのような場合になぜ相殺表示するかについては触れていません。それは,各IFRSの開発において検討することを提案していると考えられます。

<解説>

相殺表示(1)‐現行の概念フレームワーク

現行のIASB概念フレームワークでは,相殺表示(offsetting)を扱っていませんが,財務諸表の構成要素である収益(income)・費用(expense)のうち,利得(gain)や損失(loss)はしばしば,関連する収益・費用を控除した後の純額で計上されるとしています(4.30項,4.34項)。

なお,利得や損失は,経済的便益の増減額を表しており,その点では本質的に企業の通常の活動の過程において発生する収益(revenue)や費用(expense)と相違はないため,現行のIASB概念フレームワー...