金融会計の論点シリーズNo.9 金融リスク管理とヘッジ会計(下)

フジタ国際会計コンサルティング(株) 代表 藤田敬司

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はじめに

前回のシリーズNo.8(本誌 No.3240 参照)では,IAS39号(2001)を中心に,いま使われているヘッジ会計をみてきたが,今回はIFRS9号(2013改訂版)のChapter6による新ヘッジ会計に視点を移す。IASBは,一挙にではなく段階的に,ヘッジ会計のみならず金融商品会計全体を刷新しようとしており,移行期間にあっては,企業に新旧基準の選択適用を認めている。そこで,現行ヘッジ会計はなぜ見直されねばならないのか,どのように変わるのかをじっくり見極める必要がある。改訂方向は2つあり,以下の1項は「リスク管理の実効性を高める方策」,2項はオプションの時間価値等の処理でみられる「原理原則法への回帰」に注目する。

1.ヘッジ会計をより一層リスク管理に近づけるIFRS9号

IFRS9号は,ヘッジ会計をリスク管理の実務に近づけようとしている。「IAS39号によるヘッジ会計基準は,ヘッジ手段やヘッジ対象の制限,数値基準によるヘッジ有効性テスト,ヘッジ方針の文書化を要求するルール型である。リスク管理の実務にとって使い勝手も悪い」と指摘する。その点を改善しようとするIFRS9号は,「企業が金融...