ハーフタイム 監査役の"覚悟"が問われる時

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昨年の東芝の不正会計問題は,コーポレートガバナンス・コード(以下,コード)適用初年度の資本市場に冷や水を浴びせただけでなく,会計監査人の監査の品質に対しても疑念を投げかけることとなった。とりわけ,監査を担当していた新日本有限責任監査法人(以下,新日本)に対して,金融庁は,公認会計士・監査審査会(以下,審査会)の処分勧告を踏まえて,業務改善命令と3か月の新規契約締結業務の停止に加え,約21億円の課徴金納付命令に係る審判手続開始の決定がなされた。その処分理由は,監査担当者が「相当の注意を怠ったこと」と,監査法人の「運営が著しく不当なもの」と認められたことにあり,故意または重大な過失,あるいは企業サイドとの共謀等の違法行為が指摘されたものではない。つまり,金融当局から見て,監査の品質に影響を及ぼす要因の幾つかに不備等が認められたということでの処分であり,その不備等の程度がどの程度ならば容赦されるのかの判断基準は全く明らかにされていない。まさに,当局の裁量による処分内容であると捉えられても致し方ないであろう。

しかし,ことは,そんなに簡単なことではない。つまり,コードの「原則3-2. 外部監査人...