金融会計の論点シリーズNo.11 外貨換算リスクのマネジメント

フジタ国際会計コンサルティング(株) 代表 藤田敬司

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はじめに:金融商品会計と外貨換算会計の関係

外貨も外貨建金銭債権債務も金融商品であることに変わりはない。だが外貨換算と金融商品に関する内外会計基準はすべて別建てとなっている。わが国の金融商品会計基準が初めて設定されたのは1999年である。他方,外貨換算会計基準は,いまから約半世紀前の第1個別意見書(1968年)から始まり,基準相場1米ドル360円が308円となった1971年末の第4意見書を経て,ようやく基準の原型が出来上がったのは1979年であった。その過程には,固定相場制から変動相場制への移行や金融自由化に伴う為替変動リスクとの先人の苦労の跡がにじみ出ている。金融商品会計基準の20年先輩であるが,1999年改訂版は時価会計やヘッジ会計を大幅に採用した。しかし,伝統的な取得原価主義の痕跡や欧米基準との重要な違いや論点も未解決のままいくつか残っている。本稿の狙いは,金融リスクのマネジメントの一環として内外外貨換算会計の論点を検討することにある。なお,ここで敢えて"マネジメント"と呼ぶのは,為替変動リスクは必ずしもヘッジすべき対象ではなく,プラス方向へ活かすべき経営課題を突き付けるからである...