会長通牒「公認会計士監査の信頼回復に向けた監査業務への取組」の解説

 公認会計士 泉本 小夜子

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はじめに

日本公認会計士協会(以下「協会」という。)は平成28年1月27日に,会長通牒平成28年第1号「公認会計士監査の信頼回復に向けた監査業務への取組」を公表した。本会長通牒は,昨今の度重なる会計不祥事に対して公認会計士監査への社会からの信頼が揺らいでいることに応えるために実施した協会の施策の1つであり,協会の会員・準会員に対して,1)リスク・アプローチに基づく監査,2)職業的専門家としての懐疑心,3)経営者による内部統制を無効化するリスク,4)会計上の見積りの監査,5)監査チーム内の情報共有,6)審査,7)監査時間・期間の確保の7つの項目について特に留意し,真摯に監査業務に取り組むことを強く要請している。

会長通牒は新たな監査手続上の要求を加えるものではなく,現行の監査の基準の範囲内において,監査上の一般的な基本事項の再認識や監査人の役割を改めて確認しているものである。

また,同日付けで,監査提言集(特別版)「財務諸表監査における不正への対応~不正による重要な虚偽表示を見逃さないために~」も公表した。本提言集は会長通牒と重なる提言もあるがそれに留まらず,多くの不正事例から監査人が学ぶべき...