【特別座談会】税効果会計「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」の実務上の影響

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あずさ監査法人 公認会計士 小倉加奈子
PwCあらた監査法人 公認会計士 加藤達也
仰星監査法人 公認会計士 中川隆之
富士通株式会社 財務経理部 山田友和
三菱地所株式会社 経理部 小澤純一
<編集部より>
「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」の適用が間近に迫っている。これは,日本公認会計士協会(JICPA)の監査委員会報告第66号「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」を企業会計基準委員会(ASBJ)に移管するとともに,一部取扱いの見直しを行ったものだ。66号に対して聞かれていた「過去の事象が重視され過ぎており,企業実態を反映していない」等の問題意識への対応を図るべく,主に(分類2),(分類3),(分類4)の要件を改正している。
そこで本誌では監査人,企業の実務家の方々にお集まり頂き,座談会を開催した。監査人からは, 小倉加奈子 氏(有限責任 あずさ監査法人,ASBJ税効果会計専門委員,JICPA会計制度担当常務理事), 中川隆之 氏(仰星監査法人,JICPA中小事務所・中小企業担当常務理事), 加藤達也 氏(PwCあらた監査法人,ASBJ税効果会計専門委員,JICPA監査・保証担当常務理事)の3名にご出席頂いた。また,企業からは, 山田友和 氏(富士通株式会社・財務経理本部経理部,ASBJ税効果会計専門委員), 小澤純一 氏(三菱地所株式会社・経理部)の2名にご出席頂き,小倉氏の司会のもと適用指針への実務対応についてご見解を伺った。

1.(分類2)の見直しのポイント

下記の要件を満たす企業は(分類2)に該当。

・過去(3年)及び当期の全ての事業年度において,臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得が,期末における将来減算一時差異を下回るが,安定的に生じている。

・当期末において,近い将来に経営環境に著しい変化が見込まれない。

・過去(3年)及び当期のいずれの事業年度においても重要な税務上の欠損金が生じていない。

また,(分類2)の企業においては,一時差異等のスケジューリングの結果,繰延税金資産を見積る場合,当該繰延税金資産は回収可能性があるものとする。

なお,(分類2)の企業では,原則として,スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産について,回収可能性がないものとする。ただし,スケジューリング不能な将来減算一時差異のうち,税務上の損金の算入時期が個別に特定できない...