ハーフタイム 階段は"上から下へ"と掃くものだ

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アメリカでは労働者は利益を生むための機械とみなされているが,ドイツや日本では長期雇用を前提として比較的丁重に扱われている。しかし,企業不祥事によって苦境に立つ企業では,まず従業員が,たとえ経営の失敗や不祥事とは無縁であっても,リストラの対象となる。それが資本の論理であっても,アメリカのような風潮が広がると,一種の義憤を感じる人は少なくないであろう。上記タイトルは,筆者がドイツ在勤中に聴いたものであるが,ある悲痛な事件とともに思い出すセリフである。

1989年11月にベルリンの壁が突如崩壊すると,翌年6月にはまず東独マルクと西独マルクの通貨統一が成立し,10月には人口64百万の西独が16百万の東独を吸収合併する形で国家統一が行われた。そのとき大きな産業上の課題となったのは,旧東独企業をいかに立て直すかであった。社会主義経済圏随一の優等生だったはずの国営企業であるが,蓋をあけてみると財務内容はボロボロだった。社会主義経済システムが破綻し,国家計画によって回ってくるはずのカネが回らず,「金利」概念も「減価償却」制度もなかったからだ。既存住宅群の修繕を新築と装って計画達成と見せかける粉飾も次々見...