金融会計の論点シリーズNo.13 複合リスクのヘッジ戦略(最終回)

フジタ国際会計コンサルティング(株) 代表 藤田敬司

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はじめに

これまでは個々の金融リスクのヘッジ会計をみてきた。この最終回では,総括編&応用編として,原材料を外貨建てで調達する場合を想定し,価格変動が激しいコモディティ価格と為替相場の複合リスクについて,地域総括会社をベースとしたへッジ戦略を検討する。

1.原材料調達に係るリスクヘッジ

石油・ガスなどエネルギー資源,鉄鉱石,銅・アルミなど非鉄金属,コーヒー豆や大豆・とうもろこしなど穀物類(以下,"国際相場商品"という)の大部分は,わが国企業にあっては海外から輸入している。この市場には,最近は投資ファンドが介入することが増えたため,価格変動幅は増々大きくなり,その性格は金融市場に接近しつつある。

この国際商品相場の乱高下こそ一般企業が原材料等をグローバルに調達するときに避けて通れない第1のリスクである。これに,原油精製コストの変動や,天然資源や穀物を運ぶ船舶については運賃や用船料の変動が第2のリスクとして加わる。後者はバルチック海運指数(BDI)に表れるが,外貨リスクを除いては適切なヘッジ手段は見当たらない。第3は,これら商品調達では,円建てよりも外貨建て契約による場合が多いから,資源国通貨やUS...