ハーフタイム 教養は役に立つか

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あなたにとって「教養」とは何ですか,と問われれば,ビジネスパーソンにあっては,自分の目下の仕事とは直接関係ないが興味のある歴史や文化や語学など趣味の科目を,またはこれをより深く学べばより良い仕事ができると思われる学問芸術を指すことであろう。

「教養」は通常「個人の人格と結びついた知識や学問芸術」とか「心の豊かさ」と定義されるから,心が豊かになりさえすれば趣味でも学問芸術でも良いだろう。学問芸術というと思わず緊張を覚える向きもあろうが,ルソー『学問芸術論』によると,「奢侈から芸術が生じ,無為から学問が生じた」そうだから,ここでは趣味の延長線上で捉えて良いだろう。また福沢諭吉『学問のすすめ』によると,「ただむずかしき字を知り,解し難き古文を読む」のではなく,本誌の読者に関係の深いところでは「帳合(簿記会計)も学問なり」である。福沢の学問は金儲けのための功利主義・通俗主義的道具とみた人もいたが,その実学は「秩序の合理主義」を目指すものであり,いまのIFRSにも通じるものがあるように思われる。丸山眞男がまとめた福沢哲学によると,その根底には「同一行動様式の再生産から試行錯誤による不断の前進へ」が...