グループ会計の論点シリーズNo.9 のれんと無形資産(Ⅲ)

フジタ国際会計コンサルティング(株) 代表 藤田敬司

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はじめに

のれんの会計処理については,IFRS及びUS・GAAPの「非償却・減損」と,JMISの「規則的償却プラス減損」が対立している。本稿は,どちらが正しいとか,間違っているという結論を述べるのが目的ではない。のれんの会計処理の前提に立ち返って,のれんと無形資産の区分基準やそれぞれの本質を検討すれば,健全な会計処理は自から明らかになると考える。制度上の会計基準は,必ずしも会計理論の所産ではなく,減損オンリーは政治的妥協の結果であることは珍しくない。ただ,優れた会計処理とは企業に資産の健全化を促す度合いがより大きいこと,企業にあっては資産価値を忠実に開示する責任感が旺盛であること,この2点が重要である。

のれんも無形資産も物理的実体を欠く点では広義の無形資産である。しかしながらSFAS141RとIFRS3による無形資産の識別可能性に係る2つの要件のいずれも満たさないのれんは,資産ではあっても,定義上の無形資産ではない。しかも,買収価額と純資産の差額であるのれんは,常に超過収益をもたらす資産である根拠はない。次に耐用年数に注目すると,企業価値の一部であるのれんに耐用年数はあり得ず,定義上の無...