大世界史のなかのIFRS

‐新自由主義とIFRS‐

駒澤大学教授 教授 石川純治

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冒頭から私事で恐縮だが,1989年11月,私はアメリカのピッツバーグで世界史の転換点にいた。「ベルリンの壁崩壊」である。壁を斧でたたき壊す若者たち,そしてブランデンブルグの門前で壁崩壊を祝うベートベン第九の生演奏など,それらの実況中継に興奮して見入っていた。それから30年ほどがたったが,今大世界史ブームが再来している。

さて,今なぜ大世界史か,そしてそのこととIFRS(国際財務報告基準)とはかかわりがあるのか,ないのか。

大世界史ブーム再来‐今なぜ大世界史か

イギリスのEU離脱(6月23日)を受けて,2つの週刊経済誌が競うように同時に特集を組んだ。『週刊ダイヤモンド』(2016年7月16日号)ではまさに「大経済史」の文脈でEU離脱問題を,また『週刊東洋経済』(同7月16日号)ではEU危機を歴史の転換点として,それぞれ取り上げている。EU離脱やEU危機の世界史的意味を知りたい読者には,まずもって紹介できる特集になっている。

では,今なぜ大世界史なのか。それは世界が極度に不安定化してくると,その裏返しでもあるが,世界を理解したい,あるいは世界を解釈したい,という切実な思いが生じるのは当然の成り行き...