Q&Aコーナー 気になる論点(173) FASBにおける金融商品会計(1)

-金融資産の信用損失-

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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米国財務会計基準審議会(FASB)が,2016年6月に公表した会計基準更新書(ASU)第2016-13号「金融商品‐信用損失(トピック326):金融商品に関する信用損失の測定」では,予想信用損失(expected credit loss)モデルを採っています。このため,同様に予想信用損失モデルを採っているIFRS第9号「金融商品」と同じ減損処理を行うのでしょうか。

A:

ASU第2016-13号では,IFRS第9号と同様に,予想信用損失モデルを採っていますが,以前からの会計実務や規制環境,利用者の意識等が相違することから,償却原価で測定される金融資産については,IFRS第9号の二重の測定と異なり,当初から,予想信用損失の全額を計上する単一の測定としています。

<解説>

FASBの金融商品プロジェクト

2005年以降,FASBは,金融商品会計を改善し簡素化するために,IASBと共同で作業を続けていました。3つのフェーズにわけた議論は類似していますが,次第に異なるアプローチとなっており,IASBでは,2014年7月に,検討中のプロジェクトを完成させています([図表1]参照)。

[図表1] IASBの...