ハーフタイム 「制度」としての会計ルール

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わが国の会計基準は,最近でこそ税法とのつながりはやや薄れたが,会社法や金融商品取引法などと緊密な関係をもつ「制度」である。US・GAAPやIFRSも上場企業に許された選択肢であるから,広い意味では「制度」と言えよう。「制度」と言うと堅苦しく聞こえるが,個人や企業が自由勝手にやっていては,社会全体はうまく回らない,人間のあらゆる活動は「制度」内で営まれている,この点は誰でも認めるところである。

市場原理主義者は,現代資本主義の成功は市場競争と個人の自由な経済活動の成果だと主張するが,制度学派の経済学者G・M・ホジソンによると,「市場システムでは中央政府の調整機能が働き,個人は企業という非市場的な組織の中でこそ集団力を発揮できる」とみて,経済システムを動かす「制度」を重視している。また「高度に生産的な経済は,柔軟性があると同時に,制度的に豊かである」とも言う。ただ,そこで使われたフレーズ「制度的に豊か」は何を意味するかは不明だったが,ダグラス・ノース(2016)『制度原論』(原著のタイトルは『経済変化のプロセスを理解する』)は,内容はまるで経済史そのものだが,ノーベル経済学賞を受賞しただけに...