インタビュー 「監査法人のガバナンス・コード」策定にあたって

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金融庁 総務企画局 企業開示課 開示業務室長 原田一寿

<編集部より>

「会計監査の在り方に関する懇談会」は2016年3月,監査法人の組織的な運営において確保されるべき原則を規定した「監査法人のガバナンス・コード」の策定を提言した。金融庁はこれを受け,コード策定に向けた検討を進めることを目的として「監査法人のガバナンス・コードに関する有識者検討会」を設置。5回にわたる審議を経て,同年12月15日に「監査法人の組織的な運営に関する原則」(監査法人のガバナンス・コード案)を取りまとめた。編集部ではこのほど,有識者検討会の事務局である金融庁総務企画局企業開示課の原田一寿開示業務室長に,コード策定の経緯やポイントをきいた。

監査法人のガバナンス・コード策定の経緯をお聞かせください。

東芝の不正会計事案などを契機として,改めて会計監査の信頼性が問われている状況にあります。これを受け,会計監査の信頼性確保に向けた必要な取組みについて検討するため,2015年9月に「会計監査の在り方に関する懇談会」が設置され,2016年3月には懇談会の提言が取りまとめられました。

提言において,「監査法人制度は,5人以上の公認会計士で組織するパートナーシップ制度を基本としているが,企業活動の複雑化・国際化に対応するため,大規模な監査法人では人員が数千人の規模となっている一方,経営陣によるマネジメントが,このような規模の拡大や組織運営の複雑化に対応しきれていないことが,監査の品質確保に問題を生じさせている主な原因の一つである」と指摘されています。こうした指摘を受けて,監査法人においては,大手を中心にマネジメントの強化に向けた取組みが進められているところです。

こうした背景の下,大規模な監査法人における組織的な運営を確保するとともに,監査法人の経営陣によるマネジメント改革の取組みをサポートする観点から,監査法人のガバナンス・コードを策定すべく,2016年7月に「監査法人のガバナンス・コードに関する有識者検討会」が設置されました。検討会においては,有識者による検討を重ね,2016年12月に「監査法人の組織的な運営に関する原則」(監査法人のガバナンス・コード)(案)が取りまとめられ,2016年12月15日から2017年1月31日にかけて,パブリック・コメントに付されました。

コードのポイントを教えてください。

原則案は,...