CFOに必要な財務リテラシーとは何か?第3回 ROE8%は魔法の数字

東洋大学客員教授・エーザイ常務執行役CFO  柳 良平

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1.伊藤レポートの「ROE8%ガイドライン」とは

前回の第2回「良いROEと悪いROE」( 本誌No.3308 )で述べたように,ショートターミズムや過度なレバレッジはROE経営の誤解である。ROEの功罪を十分に理解したうえで,伊藤レポートのROEの記述を読み解いていこう。はじめに,最終報告書 から主な記載を抜粋して紹介する。

「資本主義の根幹を成す株式会社が継続的に事業活動を行い,企業価値を生み出すための大原則は,中期的に資本コストを上回るROEを上げ続けることである。なぜなら,それが企業価値の持続的成長につながるからである。この大原則を死守できなければ資本市場から淘汰される。資本主義の要諦は労働分配率にも配慮しながら,資本効率を最大限に高めることである。」

「個々の企業の資本コストの水準は異なるが,グローバルな投資家から認められるにはまずは第一ステップとして,最低限8%を上回るROEを達成することに各企業はコミットすべきである。もちろん,それはあくまでも『最低限』であり,8%を上回ったら,また上回っている企業は,より高い水準を目指すべきである。」

「ROEの向上は確かに経営者の責務であるが,そ...