Q&Aコーナー 気になる論点(188) 権利確定条件付き有償新株予約権

‐なぜ費用計上されるか‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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企業会計基準委員会(ASBJ)が2017年5月10日に公表した実務対応報告公開草案第52号「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い(案)」(コメント募集期限は2016年7月10日)によれば,所定の権利確定条件付き有償新株予約権は,企業会計基準第8号「ストック・オプション等に関する会計基準」の対象になるとしています。この場合,当該新株予約権の払込金額が,付与時の公正な評価額と等しければ,費用計上されないのでしょうか。

A:

実務対応報告公開草案第52号によれば,企業会計基準第8号のストック・オプションに該当する権利確定条件付き有償新株予約権は,払込金額が,付与時の公正な評価額と等しい場合でも,権利不確定による失効の見積数の重要な変動があれば,変動後の見積数による公正な評価額に基づき報酬費用の総額が変更するため,公正な評価額の増加分が費用計上されます。

<解説>

実務対応報告公開草案第52号(1)‐背景

実務対応報告公開草案第52号において,権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引は,次の特徴が挙げられるとしています(14項)。

① 権利確定条件付き有償新株予...