監査報告書の「透明化」に向けて 第2回 会社法の観点から

筑波大学 ビジネスサイエンス系 教授 弥永真生

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1.KAMを任意に記載することの可能性

(1)会計監査報告の記載事項は限定列挙ではない

会社計算規則126条 1項は,会計監査人の会計監査報告の内容とすべき事項として,会計監査人の監査の方法及びその内容,計算関係書類が当該株式会社の財産及び損益の状況を全ての重要な点において適正に表示しているかどうかについての意見があるときは,その意見,意見がないときは,その旨及びその理由,追記情報,ならびに,会計監査報告を作成した日を列挙している。しかし,これらは,会計監査報告に「最低限」含めなければならない事項であって,これら以外の事項を含めることを禁止しているものではない

そもそも,KAMは,「会計監査人の監査の方法及びその内容」にあたると考えることができると思われるが,かりに,そうでなくとも,会社計算規則において,KAMを記載することが禁止されているわけではないし,禁止されていると解すべき理由もない。

(2)任意に記載した場合の課題と対応―分量の増加

(定時)株主総会の招集通知に際しては,計算書類,事業報告,会計監査人の監査報告,監査役(会),監査等委員会または監査委員会の監査報告を株主に提供しなければ...