書評 八田 進二 編著『開示不正~その実態と防止策』

(白桃書房刊/本体3,500円+税)

金融庁 証券取引等監視委員会事務局 開示検査課長 谷口 義幸

( 40頁)

昨今,相次いで発覚している企業における不正会計や不祥事について,本書の編著者は,その大半を「『正しい情報を開示ないし報告していない』ことに起因する日本型の不正」とし,「開示不正」あるいは「報告不正」の問題として捉えている。この「開示不正」が,本書のインパクトある書名である。

本書は,こうした「開示不正」の真因を検証するとともに,その防止策を探るべく,編著者を代表者とする会計・監査の研究や実務に携わる方々をメンバーとした研究会が行った研究(2015年度の日本ディスクロージャー研究学会 特別研究プロジェクト「ディスクロージャー不正の実態とその防止策-近時のわが国の不正事案を中心として-」)の成果を取りまとめたものである。

本書では,9つの「会計以外の開示不正事案」と3つの「会計不正事案」を取り上げ,事案ごとに「事案の概要」,「開示不正による被害者」,「開示不正の実態と問題点」そして「本事案から学ぶべきもの」について検証・分析が行われている。特に,「開示不正の実態と問題点」及び「本事案から学ぶべきもの」では,その不正を引き起こした直接原因とその背景にある間接原因(根本原因と換言することができる。...