「監査法人のガバナンス・コード」への対応を聴く 新日本有限責任監査法人

  品質管理の責任者:紙谷 孝雄(経営専務理事/品質管理本部長)
  監査実施の責任者:會田 将之(消費財・小売セクター 日本エリアアシュアランスリーダー シニアパートナー)
  聴き手:町田 祥弘(青山学院大学大学院教授)

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1.コード公表後の取り組み

町田  新日本有限責任監査法人(以下,新日本)では「監査法人のガバナンス・コード」(以下,コード)の公表後,どのような取り組みをされているのでしょうか。

紙谷  いくつかありますが,まずはコードの原則3に関するところをお話します。「監督・評価機関の構成員に,独立性を有する第三者を選任し,その知見を活用すべきである」とあります。現行のガバナンス体制として,経営執行を監視する機関である「評議会」の下に「公益委員会」,「監査委員会」を設置し,公益委員会の中に「指名担当会議」と「報酬担当会議」を設置するという形をとっています。一般事業会社の指名委員会等設置会社に近いイメージかと思いますが,これらの会議体に外部の有識者が参加する形でガバナンスの強化を図っています。

3名の社外有識者の方(有富慶二氏,池尾和人氏,斉藤惇氏)には,企業経営の視点,ガバナンスの視点,資本市場からの期待の視点からご活動いただき,「経営会議」という我々のマネジメント側の重要な意思決定をする会議や,公益委員会の中で幅広い議題に対してご意見をいただいています。我々の経営が公益に資することを最重視して行われているかどうかを監視してもらっています。

町田  他に外部の方は入っているのですか。

紙谷  マネジメント側の話として,原則2に関連して「監査品質監督会議」(以下,「監督会議」)というものを設置しました(図表1左側参照)。

【図表1】監査品質向上のためのサイクル

コードでは「監査品質に対する資本市場の信頼に大きな影響を及ぼし得るような重要な事項について,監査法人としての適正な判断が確保されるための組織体制の整備及びその体制を活用した主体的な関与」が経営機関に求められていますが,重要な事項について,監査法人としてどのように関与していくかは難しい問題です。今回この監督会議を設置し,重要な事項があった場合には,理事長を議長とした監査品質監督会議に,主要な経営執行幹部が入って,積極的にリスクの情報等を収集した上で法人としての必要な対応を指示していくこととしました。その際,内向きの議論にならないよう,社外委員(橋本尚教授)にも入っていただいています。

町田  色々なポイントで外部の方が入っているのが特徴的ですね。これはどのような意図があるのでしょうか。

紙谷孝雄氏

紙谷 そうですね。外部の方に入っていただく意味には,一...