「監査法人のガバナンス・コード」への対応を聴く 有限責任監査法人トーマツ

  品質管理の責任者:石塚 雅博(レピュテーション・クオリティ・リスク・マネジメント本部長)
  品質管理の責任者:油谷 成恒(品質管理本部長)
  監査実施の責任者:山田 博之(パートナー)
  聴き手:町田 祥弘(青山学院大学大学院教授)

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1.コード公表後の取り組み

町田  「監査法人のガバナンス・コード」(以下,コード)に関して,現在監査法人トーマツ(以下,トーマツ)ではどのような取り組みをされているのでしょうか。

石塚  コード公表の3~4年ほど前からガバナンスの改革に取り組んでいます。組織体としてどうあるべきか,一般の事業会社,グローバルの組織体制などを参考にしながら,様々な議論をしてまいりました。例えば,一般の事業会社の取締役会に相当する経営会議の名称を「ボード」と改称し,ボードは経営方針を決定し,経営執行機関を監督するガバナンス機関と位置付けました。ボードのメンバーには,経営執行から独立した議長及び評議員が3分の2を占める構成とし,ガバナンスの強化を図ってきていたところです。

その中で,今般,金融庁からコードという形で,ガバナンスの指針が公表されたことは非常に大きいことでした。これだけは外せないという要素がまとめられているので,私たちとしても,今後,目指すべき方向性を整理していただいたと思います。

コードの内容は,検討会での議論の段階から趣旨を検討しており,2017年6月から,ボードの中に3名の外部有識者を招聘しました。

町田  外部有識者の選任プロセスについて教えていただけますか。

石塚  そのような候補者のリストを有している機関を通して紹介していただきました。まず,様々なご経歴を有する方々の中から,グローバル経営,金融市場,会計・財務等の経験・知見を有する方をターゲットに候補者リストを作成し,法人内の検討を通じて絞り込みをして,候補者の方にお会いする等というプロセスで決めました。条件として,トーマツの被監査会社ではない方ということは最初に決めていました。

町田  外部有識者の招聘以外で,何か他に対応が必要だったことはありましたか。

石塚  品質の重視はもちろんのこと,倫理や誠実性を意識する組織風土の改革ですね。特に倫理や誠実性というのは,グローバル・ネットワークレベルで,いま一度これを振り返り,誠実に取り組むべく活動を始めていたところでした。組織における現場の声,それも若い世代の声が吸い上げられやすいような雰囲気は非常に大事だと思っていますので,これをどうやって実現するかというのは,非常に意識しております。

町田  具体的にはどういった取り組みをされているのでしょうか。

石塚 まずは基本的なコミュニケーションのところから...