CFOに必要な財務リテラシーとは何か?第6回(最終回) 見えない価値を見える化する

東洋大学客員教授・エーザイ常務執行役CFO 東洋大学客員教授・エーザイ常務執行役CFO 柳 良平

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1.見えない価値を見える化したい日本企業

前回までは,受託者責任にも鑑みて,持続的成長と企業価値向上のために「資本効率」「資本政策」の論点を包含した「見える価値=財務情報」を高めるCFOの財務リテラシーを論述してきたが,最終回の今回は「非財務(見えない価値)を財務に転換する」ためのCFOの財務リテラシーについて,このテーマには完全な解はないものの,一石を投じてみたい。

ゴーイングコンサーンとして社会に貢献する「社会の公器」たる企業は,株主・投資家との対話においても,中長期的視野に立ち,経営理念やESGなどの非財務情報を重視 したい。日本IR協議会の企業向けアンケートである『2016年度 IR活動の実態調査』によると,IR活動の課題は「財務情報に現れにくい企業価値の説明」が引き続き最も多い回答で(59.6%,前回56.6%),かつ3.0ポイント増加となっている。また,IR活動で特に力を入れていきたいものとしては,「財務情報に現れにくい企業価値の説明」がトップ(38.5%,前回36.3%)であった。

2.非財務資本とエクイティ・スプレッドの同期化モデル

企業側が重視する非財務資本はどのようにして,...