「監査法人のガバナンス・コード」への対応を聴く 太陽有限責任監査法人

  品質管理の責任者:並木 健治(品質管理部部長)
  監査実施の責任者:柴谷 哲朗(パートナー)
  聴き手:町田 祥弘(青山学院大学大学院教授)

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1.コード公表後の取り組み

町田  「監査法人のガバナンス・コード」(以下,コード)の公表後,現在,太陽有限責任監査法人(以下,太陽)ではどのような取り組みをしていますか。

並木  最初に,私どもの法人ではガバナンス・コードへの対応は法人の運営そのものであるという認識から,品質管理部ではなく,経営企画・人事等を所掌する業務管理部が主導しています。そのこと自体が特徴的と言えるかも知れません。本来は業務管理部の責任者からお話すべき内容が多いのではないかと思いますが,品質管理の責任者というご指名ですので私からお話しします。

私どもは,何度か合併を経験して,色々な監査法人出身者の集合体となっています。だからこそ,組織のまとまりを重視して運営してきた経緯があります。準大手という言われ方もしますけれども,まだまだ大手とは大きな差があります。そうした中で,組織としての一体感が弱くバラバラな動きをしているようでは,ますます社会的にも認められないという感覚は持っています。

組織の一体感は,末端までの伝達スピードでもあります。そうした点を重視して監査に取り組んできたと思います。

また,私たちの法人は,監査に付随する業務は監査法人で基本的にやりますけれども,他のアドバイザリー業務については基本的にグループのアドバイザリー会社で行っています。「監査法人は監査に特化するべき」という考え方で動いている法人です。

そうしますと,監査法人の組織作りが基本的には監査品質につながってきます。監査の現場の人達に対して本部がどういうふうに支援していくか。それがきちんと行われているかをコードの枠組みを利用し,取り組もうと考えています。

体制作りで取り組んでいることとしては,まず,監視と執行の分離を行っていくこと。監査品質では,パートナーの意識改革に取り組んでいます。パートナーの行動規範が示され,評価にもつながります。

また,働き方改革にも取り組みます。監査をやっている人間が疲弊感を持ってやっていたのでは懐疑心も生まれないので,組織として環境を整えることも重要な監査品質のテーマです。

町田  それらの取り組みは,コード以前からやっていたのですか。

並木 そうですね。部分的には取り組んでいました。外部有識者には今年の5月くらいから順次入って頂いております。私どもの法人は監査業務に特化していますので,非常に公益性が高い業務を行っているとい...