インタビュー ASBJ小賀坂副委員長に聞く 収益認識基準の開発動向公開草案の公表を経て

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企業会計基準委員会(ASBJ)は,2017年7月20日に企業会計基準公開草案第61号「収益認識に関する会計基準(案)」及び企業会計基準適用指針公開草案第61号「収益認識に関する会計基準の適用指針(案)」(以下,合わせて「公開草案」という。)を公表した。損益計算書のトップラインを決める重要な会計基準について,収益認識専門委員会の専門委員長を務めている小賀坂敦・ASBJ副委員長にインタビューを行った。

-2年余の時間をかけて公開草案を公表され,約2カ月が経過しましたが,公開草案公表後の反響を教えてください。

公開草案は,全上場企業に関係するものであり,これまでASBJが開発してきた会計基準の中で,最も影響の大きいものになると思います。8月下旬に,公益財団法人財務会計基準機構のオープン・セミナーを開催し公開草案の解説を行いましたが,東京会場は案内後10日ほどで満員になりました。その後,公開草案について様々な問い合わせを受けていますが,皆様,細かい点まで読み込まれている感じを受けました。

-公開草案の特徴を教えてください。

特徴的な点としては,国内外の財務諸表の比較可能性を高めるために,IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」の定めを基本的にすべて取り入れた上で,我が国における適用上の課題に対応するために,代替的な取扱いを上乗せする形にした点にあると思います。

ASBJは,昨年8月に中期運営方針を公表していますが,我が国の上場企業等で用いられる会計基準の質の向上を図るためには,日本基準を高品質で国際的に整合性のとれたものとして,維持・向上を図る必要があるとしており,今回の収益認識に関する新基準の開発も,この取組みの一環になります。

因みに,中期運営方針を公表するまではコンバージェンスという用語を用いていましたが,コンバージェンスは「収斂」という意味で,少しASBJが取り組んでいる内容と異なるため,その用語は今では用いていません。

-昨年2月に公表された意見募集文書に対しては,多くの方から意見書が提出されました。これらの意見を受けて,草案作りの段階で,特に困難であった点等を教えてください。

最も難しかったのは,IFRS第15号の定めをどの程度新基準に取り入れるかという点でした。IFRSと米国会計基準がほぼ同じ内容の収益認識基準を適用する中で,日本基準も国際基準と整合性を図るべきではない...