私の会計史 theme6 税法と民法を学び,会計処理の武器とする

  藤田敬司

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トライアングル時代の不良債権処理

高度成長の終わりは不況の始まりとなった。投資価値が下がり,売掛金の回収遅延や回収不能が増え始めたのだ。企業会計原則を中心として,商法・税法・証券取引法のトライアングル体制の中で健全決算を守るには,有税・無税にかかわらず投資有価証券の評価替や不良債権を償却する仕事が重要になってきた。しかも税効果会計基準がない時代である。不良資産の評価損が有税か無税かは会社決算に大きなインパクトを及ぼすから,無税処理可能かどうかの判断も不可欠とされた。

個人的にも決算管理室勤務3年目ごろから債権償却関連の仕事が俄然おもしろくなり,税法と民法の勉強に熱が入り始めた。不良債権の処理にはまず法人税法基本通達に通暁する必要がある。それでも税務上の扱いには不明な点が多々あり,疑問点は本社ビルの隣の国税庁審理課に事前相談に出かけたこともある。次に,担保や保証による回収可能性については民法が,また法的整理による債権回収または放棄については破産法や会社更生法の勉強が必要になり,普段から審査部と連携して営業各部や国内支店に出向いて損失を立証する書類が揃うかどうかの打ち合わせに奔走した。主体的に...