収益認識基準公開草案の検討 財務諸表作成者の問題意識と実務対応 File07 日本チェーンストア協会

( 10頁)

企業会計基準委員会(ASBJ)は公開草案「収益認識に関する会計基準(案)」等への意見募集を終え,来年3月までの基準化に向けて審議を再開した。同草案に対して意見を提出した日本チェーンストア協会は,個別財務諸表への適用のあり方や,会計処理を巡るいくつかの論点をとりあげて現行の実務に照らした課題を指摘している。特に,複雑な運用形態が見られる我が国の「ポイント制度」については,昨年の論点整理の段階から「IFRS15号の処理は日本の実務に馴染まない」としてASBJに特段の配慮を求めていた。同協会が強い懸念を示す会計処理の課題を中心に話をきいた。

1.公開草案について

――公開草案の内容をご覧になって,全体としてどのように評価されていますか。

丸井グループ・財務部長・村井亮介氏(以下,村井氏): 当協会からは昨年の論点整理の際に大きく3つ,「ポイント制度」と「総額/純額表示」,「商品券」について意見を提出しました。公開草案を見ると,ポイント制度について事例を2つ(設例23・31)取り上げていただきました。また,純額/総額表示については,各社に様々な契約形態がある中でどのように扱っていくか判定が難しいと感じていましたから,返品条件付買取仕入について明確に「本人に該当」との記述(設例29)をしていただいたことなどは有難いと思っています。ある程度,我々の意見を反映していただけたとの印象を持っています。

イオン・経理部部長・原伸明氏(以下,原氏): 今回の議論を通じて我々小売業界にも様々な処理があることを我々自身も理解したところがあります。収益認識についてはIFRSの導入に関する自社内での勉強会などで理解していた内容との違いを少し感じていたので,日本基準として対応していく方向性がある程度見えてきたように思います。

イトーヨーカ堂・経理担当オフィサー・中谷龍世氏(以下,中谷氏): 公開草案については思っていたよりも全体的にマイルドな内容になっていると感じました。それでもやはり,我々としては税務との関連,ポイント制度などが気になるところです。

――これまでの間,ASBJからのアウトリーチを受けられたと思います。どのような議論を交わされたのでしょうか。

中谷龍世氏
(イトーヨーカ堂・経理担当オフィサー)

中谷氏: ASBJとは昨年の6月と今年の5月に意見交換をさせていただきました。

原氏:ポイント制度や消化仕入について...